私たちの生活の場は地上という動線が決められた2次元空間の世界から,ドローン技術により夢と思われた3次元空間の場に移動できる時代となりました。このドローン技術により新たな産業が生まれ,建設業界においても俯瞰的かつ詳細な情報を提供できるドローンへの産・官・学の期待は大きなっています。例えば,施工管理,構造物点検,災害調査等の領域での活用が始まっており,建築分野からだけでなく業界の垣根を越えて様々な専門分野からの参入も見込まれています。建築分野におけるドローン技術の検討状況について,学術領域では2016年度に日本建築学会において「UAVを活用した建築保全技術開発WG」が設置され,実構造物を対象としたドローンを用いた調査実証実験や点検調査時のアクセシビリティが検討されています。また国土交通省においては2017年度より基準整備促進事業による「非接触方式による外壁調査の診断手法及び調査基準に関する検討」が2か年実施されることになり,赤外線カメラ等の非接触方式による外壁調査の診断精度に関する整理・検証,及びドローンの活用を含めた効果的かつ確実な診断手法及び調査基準の検討が始まりました。さらに首相官邸政策会議による小型無人機の利活用と技術開発のロードマップに,建築分野でのドローンの活用水準を照らし合わせた場合,2017年に達成する有人地帯における目視内飛行から,2020年代に達成目標とする都市を含む地域における目視外飛行が実現されることを考慮すると,建築領域でもドローン技術が活用できるプラットフォームを構築しておくことが求められると思われます。
一方で課題点も多く,ドローン分野における航空法や電波法の法的要因,気象要因,機体安全性,飛行技術等だけでなく,建築特有のプライバシー・騒音問題,人口集中地区での飛行,安全対策,建築に関わる保険等のドローンを飛行する前の検討が必要となっています。さらに,建築物を対象としてドローン技術を安全かつ効率的に活用するためには,これまでの既存技術(例えば,建築物の点検調査方法等)を十分に理解し尊重することが大切となります。以上のような社会的背景を踏まえ,建築分野においてもドローンを活用するための人材育成,技術支援,そして標準化と普及を目的として,2017年9月1日に一般社団法人 日本建築ドローン協会(Japan Architectural Drone Association, 略字:JADA,呼び名:ジャダ)を設立しました。当協会は建築分野とドローン分野による技術を融合し,公正・中立な立場で活動に取り組む産官学連携を重要視した団体であります。当協会の活動を通して空の産業革命と言われるドローン技術を建築分野にも導入することで,新しいイノベーションと,既存技術とドローン技術の共存・協調による相乗効果が生まれることを期待しています。さらに当協会はドローン技術の活用により,人と人,多様な技術の融合,そして現在と未来をつなげられるように社会貢献して参りたいと考えております。